「またメキシコに行くの?」 なんども聞かれるその言葉への答えは決まって 「だってタコスが恋しいから!」

私が初めてメキシコに行った2014年。それからわずか4年の間に、すでに7、8回メキシコに足を運びました。

なぜ、私がこんなにもメキシコに惹かれるのか――?

ニュースではネガティブな部分だけが報道されることが多いですが、私が出会ったメキシコ人は人なつっこい陽気な人たちばかり。世界遺産が多い国の一つでもあり自然や歴史、興味深い文化、アートにあふれた国。そして、食べることが大好きな人たちが住んでいる国なのです。

肥満の人が多い国といわれるメキシコ。その理由は?

おどろくべきことに、メキシコ人は1日5食。街を歩けば、何かしらを食べながらコーラを飲んでいる人をたくさん見かけます。

2013年6月に国連食糧農業機関(FAO)が発表した調査によると、メキシコが先進国の中で肥満率が最も高い国になってしまいましたが、それも納得の食生活。子どもたちの将来の夢は「コーラの会社で働くこと」。理由は、コーラの会社で働けば、好きなだけコーラが飲めるはずだからからだそう。

そんな食が大好きなメキシコ人の大好物のひとつは「タコス」です。メキシコ人の生活に欠かせない料理と言って過言ではないでしょう。

街のいたるところには、タコス屋台やタコスレストランがあり、お肉を焼く香りが辺り一面に漂っています。一度踏み入れてしまうと、思わず吸い寄せられてしまう危険スポット。

覗いてみると数種類のお肉が鉄板の上でジュージューと音を出しながら焼かれていて、思わずよだれが……。

本場のタコスは、日本で食べるタコスとは全く違う!?

タコスといえば黄色のパリパリの皮に包まれたひき肉と千切りのレタス、たっぷりとチーズがかけられたものだと思っていた私。

しかし、メキシコで食べたタコスは小麦粉とトウモロコシの粉で作られ、ふわふわとしたパステルイエローの皮・トルティーヤに、ジューシーで肉厚なお肉が挟まれ、上から刻まれた生の玉ねぎやパクチーがたっぷりのっています。そこにサルサやチリをかけ、最後にライムをぎゅっと絞るのです。

大きさは手のひらより少し小さいサイズ。具材がこぼれないよう手でトルティーヤを包むようにしてから、一気にかぶりつきます。

最初に広がるのは、トルティーヤのふわっとしたやわらかい歯ざわりと、鼻に抜けるトウモロコシのやさしい風味。次に、お肉とうまみとスパイシーなサルサがガツンときます。 新鮮な野菜の食感とライムのさわやかな酸味の後味があり、最後にはさっぱりと食べることができました。

実は日本のファストフードなどで食べられるタコスは、アメリカンスタイルのタコスで、本場のタコスとはまた違ったものなのです。

タコス屋台の営業時間はたったの3時間

メキシコで仲良くなったアントニオに「どこかおいしいタコス屋さんを知っている?」と聞くと、「街の中央にあるカテドラル裏の屋台がいいよ」と教えてくれ、翌日のランチに行ってみることにしました。

しかし、次の日に出ていたのはフルーツの屋台だけ。不思議に思ってアントニオに聞いてみると、「夜の8時ごろからしか開店しないよ」と言うのです。メキシコでは一日中屋台が出ているのではなく、同じ場所でも時間帯によって出ている屋台が違います。

タコス屋台は、それぞれ決まった時間から開店し、その日の具材やトルティーヤが終わったら閉店。

具材も、牛・豚・鳥といった肉の種類だけでなく、部位、調理方法までお店によって違うので、メキシコ人はその日の気分によっていろんなお店に行くんだとか。 人気のお店は2、3時間で完売してしまうそうです。

メキシコ流・タコスの食べ方(屋台編)

夜に行ってみると、アントニアおすすめのタコス屋台はすでに人だかりができていました。注文すると、スペイン語が分からない私に店主が自分のお腹をと胸を指差しながら部位を聞いてきます。

最初、意味が分からず戸惑っていると、まわりのメキシコ人はお腹を指差しながら「お腹の方がうまいから、お腹を選べ」と口を揃えていました。 熱々のお肉がのったタコスが渡されると、今度は「ライムを溢れるほどかけなさい。それがメキシコのタコスだ」と嬉しい世話を焼いてくれます。

脂たっぷりのお肉が挟まったタコスを頬張り、コーラで流し込むのは太っても後悔のない味! これが1枚100円ほどで食べられてしまうとは……。

メキシコ流・タコスの食べ方(レストラン編)

屋台のタコスに味をしめた私が、次に挑戦したのがちょっと高級なレストランでのタコス。庶民の代表料理であるタコスがそれなりのお店だとどんな味わいになるのか気になって行ってみました。

メキシコカラーの衣装に身を包んだウエイトレスさんが運んできたのはトマトや、アボカド、玉ねぎ、チリソースなどが何種類ものったカート。なんと、お客さんの好みによってその場でサルサを調合して作ってくれるのです。目の前で作られていく世界に一つだけのオリジナルサルサに思わずうっとり。

聞くと、石のお皿でサルサを作る方法が昔からの伝統的なスタイルなんだそう。

フレッシュなサルサで食べるタコスは、屋台のものとはまたひと味違い落ち着いてゆっくりと楽しめました。

メキシコ流・タコスの食べ方(家庭編)

屋台、レストランときて、家庭のタコスを食べないわけにはいきません。

料理好きの友人・ルーシーに「家だとどんなタコスを食べているの?」と、尋ねてみると「私はアボカドをのせるタコスが好きだ」との答えが返ってきました。

アボカドは切るとすぐに変色してしまうので、多くのお店ではつぶしてレモン汁などと混ぜた状態にするところが多いです。しかし、切りたてのアボカドをすぐにタコスにのせて食べられるのがお家ならではの楽しみなんだそう。

ほかにも、カロリーたっぷりのサワークリームを贅沢にのせたり、夕食の余りをトルティーヤに巻いてタコスにしたりと、なんでもタコスにしてしまうのが家庭での食べ方なのです。

家庭で作れるタコスレシピはこちら

メキシコのタコスが恋しくなる理由

メキシコ人は人との繋がりや、家族をとても大切にしていて、とにかくおしゃべりが大好き。屋台でタコスを食べているときも、隣のお客さんや店主が声をかけてきてくれます。

「今日はいい天気だね」「どこから来たの?」「タコスはおいしい?」「辛いのは平気?」

何気ない会話のスパイスが1日をハッピーにしてくれるのです。

もしかしたら、私がタコスを恋しくなるのはおいしいタコスだけでなく、タコスを食べながら、タコスを愛するメキシコの人たちと交わすあたたかい会話なのかもしれません。

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