脱サラして夫婦で農業の道へ。滋賀県の里山で育つ 「原木しいたけ」がおいしいワケ

滋賀県の北西部に位置する高島市。その中でも最北端にあるマキノ町は、山々に囲まれた
自然豊かな町で、昔から原木しいたけの栽培がさかんです。
そんなマキノ町の押しも押されもせぬ人気スポットはメタセコイヤ並木。紅葉の時期にな
るとカメラを持った旅行者がどっとおしかけます。

そんなメタセコイヤ並木のほど近くに、脱サラして、農業を始めた夫婦が営む農園「みな
くちファーム」があります。ここで生産される原木しいたけは感動のおいしさ! ファン
になってしまった人も多いとか。そのおいしさの秘密にせまるべくお話を伺ってきました

脱サラして始めた農業。こだわりはその「美しさ」

みなくちファームを営んでいるのは水口淳(あつし)さん、良子(りょうこ)さん夫妻。
就農する前、淳さんは会社員、良子さんは専業主婦でした。
以前はアパレルの輸入販売業に携わっていた淳さん。景気によって売り上げが左右され頭
を悩ます日々でした。そんなとき、「人間の衣食住、特に食に関わる仕事のほうが未来が
あるのではないか。それなら自分で一から作れる農業がいい」。
そう思い立ち、2014年に一念発起して脱サラ、就農することを決意しました。それにとも
なって良子さんも農業の道へ。現在、「原木しいたけ」「まくわ瓜」などを中心に50種の
野菜を無農薬・有機で生産しています。めずらしいものでは、「フランス菊芋」という野
菜や彩りあざやかな大根を栽培。道の駅や直売所で販売したり、近くの飲食店に卸したり
しているそうです。

(写真提供:みなくちファーム)


良子さんの栽培のこだわりは見た目の美しさ。きれいに洗って丁寧に一つひとつ袋詰めし
ています。そんな良子さんのとっておきは「野菜ブーケ」です。

(写真提供:みなくちファーム)


お花のブーケは食べられないけれど、野菜のブーケは枯れることなく、食べられるのがい
いですね。大切な人のプレゼントなどにされる方が多いのだとか。

おいしさの秘密は原木にあり

いろんな種類の野菜をたくさん作っていますが、マキノ町では昔から原木しいたけの栽培
がさかんなこともあり、みなくちファームでも原木しいたけを作っています。
原木しいたけというのは、直径20センチ長さ1メートルほどの丸太の木に菌を打ち、育て
られたしいたけのこと。原木には「クヌギ」という木が使われ、みなくちファームで使わ
れる原木はすべて地元マキノ町の山のクヌギです。淳さんが山へ行き、切り出してきた原
木なのです。

(写真提供:みなくちファーム)


マキノ町のクヌギの木は年輪の幅が大きく、成長がはやいのだそうです。つまり、栄養価
が高い木だということ。「だから、やわらかい肉厚のしいたけができる」と淳さんが教え
てくれました。

(写真提供:みなくちファーム)

それに加えて、マキノ町は滋賀県の北部に位置する豪雪地帯。寒暖差の大きなところです
。つめたい雪の下で寒さに耐えて、おいしいしいたけが育つというわけなのです。
このように自然に恵まれたところですが、2018年の台風21号では原木がなぎ倒され、今年
の台風19号でもビニールハウスが壊れるという被害が出たのだと良子さん。農業とは厳し
い自然と向かいあうもの。
「昔は燃料を取るために山に人が入ることは当たり前だったんです。だから、そこには獣
が寄ってこなかった。でも、人が山に入らなくなると、山を獣が荒らすようになった。山
の手入れが行き届かへんかったら、台風や大雨のときに大きな被害がでることになる」と
淳さん。「だから、原木を切って山を手入れすることは里山を守ることにもつながるんで
す」と教えてくれました。
 
そうやって山を大切にしているからこそ、山もこたえてくれるのかもしれません。木の栄
養価が高いということは、山が豊かだということにつながっています。

しいたけは、ただ焼くだけでおいしい

そんな豊かな環境で育った原木しいたけを、「焼いて、塩をかけて食べるのが一番おいし
い!」と、良子さんはにっこり。おすすめのしいたけの食べ方について教えてくれました


「しいたけを調理するときは洗わないで使います。軸が一番おいしいので切らないでくだ
さいね。いしづきだけ切り落としてください。しいたけはスライスするよりも十字に切る
としいたけの歯ごたえも楽しめますよ」と、オーブントースターに。両面で5~7分焼きま
す。

しばらくすると、オーブンからただようしいたけの香り。もぎたてのしいたけは、香りも
濃厚です。

ゆずを絞ると、どこかの料亭ででてくるお料理のよう! 口にいれるとしいたけそのもの
の食感が味わえます。

こちらはしいたけチーズバケット(レシピはこちら)。

しいたけといえば、炊き込みご飯
や煮物などでは脇役ですが、これらの料理では主役になれます。
また、しいたけは乳製品との相性も抜群! チーズやクリームといっしょに食べるのがお
すすめです。このしいたけチーズバケットにマヨネーズを加えたり、しいたけとベーコン
を一緒にいためたりして味を濃くすると、お子さんでも食べやすくなるんだそう。カリッ
と香ばしい食感としいたけの風味があわさっていくつでも食べられそうです。手軽に作れ
るので朝食にもぴったりです。

夢は「収穫、料理、食事を楽しめる場所」を作ること!

みなくちファームの作業場に併設されているこちらのキッチンは、実は水口さん夫妻の夢
がつまっている場所。
今はまだ準備段階ですが、近いうちにこのキッチンは収穫体験と調理が楽しめる場所にな
るのだそうです。良子さんは「最近の都会の子どもたちは、自分が食べている野菜がどん
なふうに畑で育つのか、全く知らない子どもも多い。そんな子どもたちに野菜の本当の味
を知ってほしい」と話します。

どんどん新しいことに挑戦し、農業の魅力、野菜作りの楽しさを広げていく水口さんご夫
妻。みなさんもぜひ、水口さんのしいたけや野菜を食べに、滋賀県の里山まで、来てみて
ください。

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